第五話:治療が始まり、向き合い方が変わった日々
目次
初めての治療と、吸入薬との出会い #
診断がついたあと、最初に処方されたのは「パルミコート」という吸入ステロイド薬だった。
吸入の仕方について丁寧な指導を受け、
その日から朝夕の吸入が新しい日課として始まった。
吸入の前には、まず息を吐ききってから思いきり吸う──
という一連の“儀式”がある。
毎日それを繰り返していると、横で見ていた1歳半の娘が
なぜか一緒に「ふーっ……すーっ……」と真似し始めた。
まだ吸入器も持っていないのに、動きだけは一丁前で、
こちらが思わず笑ってしまうほどの熱心さだった。
いや、君はまだ、いやずっと吸わなくていいんだよ。
効いているような、いないような日々 #
「これで劇的に良くなるのかな」
そんな期待が正直あった。
実際に使ってみると、
たしかに症状は“まずまず”落ち着く気がした。
ただ、完全に咳が消えるわけではない。
午後になるとまた咳が出てきて、
追加で吸入をする──そんな日が続いた。
「効いているのか、効いていないのか…いつ治るんだ」
自分でも判断がつかない微妙な状態だった。
数週間後に見えてきた「コントロール」という感覚 #
それでも数週間続けていると、
徐々に症状が落ち着いてきた。
そして次第に、
これは“治す”というより“コントロールするもの”なのだ
という感覚が自分の中に芽生えてきた。
診察のとき、先生はこう言ってくれた。
「完治しようと焦らなくて良くて、コントロールするという感覚が大事だよ」
「一生付き合っていけばよいよ」
その落ち着きっぷりが妙に達観していて、
「この人、ぜんそく界の仙人なのでは」と一瞬思った。
受け入れるということ #
「治らないかもしれない」という不安よりも、
「コントロールできる」という安心の方が大きくなっていった。
そしてようやく、
この症状を“自分のもの”として受け入れられるようになった。