第一話:水の中で起きたこと
目次
水泳が好きだった #
物心ついた頃から、水泳が好きだった。
幼いころから得意で、水の中にいるときだけは、身体がふっと軽くなるような、自由な感覚があった。
その感覚が好きで、社会人になってからもずっと泳ぎ続けていた。
あの日、少しの油断から #
ある日、いつものように泳いでいたときのこと。
ほんの少しだけ水を飲んでしまい、それが気管支に入った。
本来なら咳き込んで一度止まればよかったのに、
「上級者に見られたい」という妙なプライドが働いてしまった。
咳き込むのはカッコ悪い。
そう思って、必死に我慢してやり過ごした。
止まらない咳 #
家に帰ってからも咳が止まらなかった。
数日経っても、数週間経っても、状況は変わらない。
会社では、突然“笑ったような感じ”で咳が出てしまう。
家族との会話では、ささやくように話せば咳は出ないのに、
会社での「オフィシャルな感じ」の会話になると、途端に咳き込んでしまう。
特に電話は最悪で、受話器を耳に当てた瞬間に(まだ話し始めてもいないのに)症状が出やすかった。
ここまでが、僕の最初のつまずきだった。
この違和感が、後に長く続く咳の物語の始まりになる。